”Jelly Tones”-Ken Ishii-

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”Jelly Tones”-Ken Ishii-

RS 95065


90年代当時世界最高のテクノレーベルだったベルギーの名門R&Sから突如出現した日本人。

その登場の仕方からして、やたらめったらカッコよかった。

”海外で評価された日本人だからすごい”ということではない。当時のテクノという音楽には、作った奴がナニ人か、とかいうことよりも、単純にサウンドに対するリスナーの好奇心の方が上回っていて、結果的に発信者の人種やそれぞれが帰属する文化に対するネガティブな偏見のない開放的な気風があった。そういうところを愛していたし、そういう土俵にちゃん日本人がいることが誇らしかった。

このアルバムをきっかけに、最高のアニメーター森本晃司の名前を覚えた人も多いはず。ビジュアルイメージと相まって映画一本分の妄想を見せてくれます。


ダイナミックオーディオ企画室・佐藤 泰地

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”Teddy Wilson And His Orchestra Featuring Billie Holiday”-Teddy Wilson & Billiy Holiday-

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”Teddy Wilson And His Orchestra Featuring Billie Holiday”-Teddy Wilson & Billiy Holiday-

COLUMBIA CL 6040 10 inch


1980年代、ダイナミックオーディオ新宿店で働いていた時は大変だけど楽しかった。
昼飯は10分以内。もちろん中古レコード屋に行くためだ。

三光町交差点近くの細長い雑居ビルにJAZZ中古レコード店「八月社」があった。
多い時は日に2回、昼と夜にお邪魔したものだ。こんな若輩の私にコーヒーを出してくれたりね。

ある日、この「LP名盤だよ」の一言とともに取り出されたそっけないLPジャケット。お店のJBL <L26>からは浸透力のあるサウンドが聴こえる。
アンプはSAUSUI<AU9500>。プレイヤーはガラード<401>とピッカリングの針。

これ自分の装置で聴いたらもっとすごいんじゃないの?なんて早速家の自慢の機器で鳴らすとS(信号)とN(ノイズ)が半分半分の音が出た!!そしてガッカリ。あ〜なんてLPを買ってしまったんだ、と心の中で叫んだものです。確か26歳の時だ。

あれから30年以上、いまではしっかりと音楽だけが、演奏だけが聴こるようになりました。
「What A Little Moonlight Can Do」におけるビリーとベン・ウエブスター(ts)のアドリブ。
「When You’re Smiling」ではビリーとレスター・ヤング(ts)とのアドリブ。圧巻です。

SP時代。両面で8曲の3分間芸術に綺羅星のような演奏家たちがいた。


ダイナミックオーディオ・トレードセンター店長・厚木 繁伸

 

”THE HUSTLER”-Kenyon Hopkins-

HS2

”THE HUSTLER”-Kenyon Hopkins-

KAPP RECORDS KL-1264


1961年公開作品 監督はロバート・ロッセン。同じ年「ウエストサイド物語」が公開されている。

プールビリヤードの勝負師エディはニューヨークにいるNo.1ハスラーの”ミネソタ・ファツ”と戦い、勝利することによって栄光を手に入れようとしていた。しかし、ファツとの勝負を通して自分の未熟さと傲慢さから最愛の人を失ってしまう。そんな物語。

フィル・ウッズのアルトサックスが奏でる「メインタイトル」を聴けば全てが蘇ります。
もちろんファツとのビリヤードの場面はとてもカッコいいのですが、歳を重ねてくると
前半の恋人との出会いの場面がなぜか心に沁みてくるんですね。
また、ブローカー役のジョージ・C・スコットの演技の上手さとカッコよさに痺れたりと。

そして、国内盤しか持っていなかった私が、中古レコード屋でこのジャケットを柵から見つけた時、思わず声が出た事は言うまでもいありません。ちなみに映っている二人はポール・ニューマン(エディ)とパイパー・ローリー(サラ)

好きな映画と好きな音楽、なんて良いカップルなんだろう。


ダイナミックオーディオ・トレードセンター店長・厚木 繁伸

 

”死刑台のエレベーター”-Miles Davis-

MD1

”死刑台のエレベーター”-Miles Davis-

Fontana 660.213


1958年 ルイ・マルが25歳で監督したデビュー作品。

オープニング。カララ婦人の唇のアップから漏れる「あなたを愛してる」の一言からサスペンスは始まる。
そこに重なるマイルスのトランペットサウンドのサウンドはザラっとしていて、いやがうえにも緊迫感をあおってくる。

この映画は10代の私に、雷に打たれたような衝撃を与えてくれました。
マイルスはカララ婦人の妖しい美しさを、その心の内を見通すように音と音楽で表わします。

救いの無い物語が最後に光り輝くのは現像中の印画紙の中にほほ笑むカララ婦人とダベルニエ。やがて現像オーバーで黒く変わっていく印画紙のバックでマイルスが絶望の極致のようなサウンドを奏でる。

この素敵なオリジナルLPジャケットを手にするまでには10年以上の時間が必要でした。
ジャンヌ・モローを下から見上げるワンショットで決めたカバーは私の宝物。

私を深くJAZZと映画の世界へと引き込んでくれた作品です。

 


ダイナミックオーディオ・トレードセンター店長・厚木 繁伸

“OUR MAN IN HAVANA”-JEFF MILLS-

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“OUR MAN IN HAVANA”-JEFF MILLS-

Purpose Maker ‎– PM-004


Jeff Mills といえば、彼の創設したレコードレーベルPurpose Makerもひたすらストイック!

かっこいいジャケット…というかジャケット自体は真っ黒で、レーベル面のところに穴が空いていて、中身が見えるようになっているものすごく”実用的”なレコード。

ミニマルを体現するかのように繰り返されるダンサーの姿に目を奪われたが、いかにも”プロのための道具”という感じで、高校生だったぼくは、DJなんてやらないのに手に入れてもいいんだろうか…ぼくに使いこなせるだろうか…と躊躇した。しかし頭の中で誰かに「今だ!ピンときたら迷わず手に入れろ!」と言われた気がして、気がつくとレジに持っていっていた。

1990年代は他にもDerrick MayやCarl Craigなどデトロイトテクノの巨人たちが次々と目の前に現れた。こういうことがずっと続く、と思っていた。今になって、それはほんの一瞬の特別な時間であったことに気づく。若い頃の自分に言ってやりたい「いまだ!ピンときたら迷わず手に入れろ!」


ダイナミックオーディオ企画室・佐藤 泰地

“Mix UP vol.2”-Jeff Mills-

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“Mix UP vol.2”-Jeff Mills-

SRCS 7969


全5集からなる伝説的なDJミックスCD。

いわゆるテクノというジャンルにおいて重要なのはもちろん、リリースから20年を経て、この作品がいかに稀有な誠実さを持っていたかを思う。

人工天体のダンスフロアで踊る人々を描いたのは、プラモデル箱絵や、児童向け化学読本で圧倒的な世界観を発揮した絵師・小松崎茂先生。

このシリーズの監修者である石野卓球が紹介していた小松崎先生の言葉が素晴らしい。

「絵とか音楽とか、無くなったって人間は死んだりしません。食べ物ではありませんから。でもね、そういうものがなくなってしまうと、心が枯れてしまうんです。それは恐ろしいことです」


ダイナミックオーディオ企画室・佐藤 泰地

”Schumann Sonata in D minor for Violin and Piano.Opus 121”-Georges Enesco-

エネスコ

”Schumann Sonata in D minor for Violin and Piano.Opus 121”-Georges Enesco-

REMINGTON R-149-50


ルーマニアの天才ヴァイオリニスト。
この音楽に接した時の衝撃の大きさは、今までの音楽経験の中でもトップクラスです。

エネスコ最晩年の1952年の録音。
大レーベルの影を一切感じさせない手作りのような音楽でありレコードです。
子供が描いたようなLPジャケットからどのような演奏が現れるのか!!

演奏テクニックとか録音テクニックとかを遥かに超越した高みにある演奏ではないでしょうか。一度耳にしただけで永遠に忘れることのできない時間的体験が記録されています。
”日々の音楽”ではありませんが、私の大切な演奏の一つです。

もしもシューマンがこの演奏を聴いたら、一体どんな思いを描くのでしょうか…。


ダイナミックオーディオ・トレードセンター店長・厚木 繁伸