”Maiden Voyage” -Austin Peralta–

ペラルタ

”Maiden Voyage” -Austin Peralta–

八十八 VRCL18831

#SPAIN


これから9枚、昨日行われました第41回マラソン試聴会で私が使いました音源のご紹介をさせて頂きます。

さて、いいジャケットにはいい音楽が入っている。いまはそんなにラッキーな事は滅多に無いものだ。15歳の横顔はいったい何処を、何を見ているのだろう。大人びた表情がなぜか寂しそうに感じるのは私の思い過ごしだろうか。

彼はもうすでにこの世の中にはいない。1990年生まれだというのに。

この一枚はオースティンが15歳の時に録音された初リーダー作品だ。
エイティエイツの伊藤八十八氏に見いだされ最高のリズムセクションが用意されて、やりたい事をやらせてくれたアルバム。

怖いもの知らずや若さや勢いだけの音楽ではない事は、JAZZを聴いてきた方ならピンと感じるのではないでしょうか。
テクニック、アドリブ、スピード、どれを取っても疑問を持たずに音楽が心に入ってくるのが心地いい。
それにもまして驚くのが、とても美しいピアノタッチなのであります。どんなにアドリブのスピードが上がっても荒れることがないのだ。
力任せではなくても底鳴りするオースティンのピアノサウンドは独特の響きを放ち、リスニングルームに存在感をしめします。

15歳のオースティンから、ドラマーのビルが30代、大御所のロン・カーターが70代と親子3代のようなピアノトリオだが、温かく見守る親のような気持ちは微塵もなく、容赦ないインタープレイを繰り広げている。
試聴会で再生した[SPAIN]はスピードとスリルに溢れた演奏でとても気持ちがいい。特に曲のエンディングで坂道を転がるように演奏をする3人がピタッと終わらせるのは圧巻。

機器のバランスがいい時に、思い切ってアンプの音量を上げてこの曲を聴くと目の前にオースティンが生きているように躍動するのだ。
勇気を持って音量を上げた人にだけに得られるかもしれない喜び、快感、満足感。

しかし、もうオースティンの新しい演奏を聴くことはできない。とても残念で悲しくもあるが彼の音楽をその時々で聴き続ける事が賛辞になるのではないでしょうか。
もちろんそれにはAUDIOが、使い手が試される事であると思いますが。

素敵なアルバムを一人でも多くの人に知ってもらいたいのはマニアの常でしょうかね。


ダイナミックオーディオ・トレードセンター店長・厚木 繁伸

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”µ-Ziq” -in Pine Effect–

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”µ-Ziq” -in Pine Effect–


1995年リリースらしいから、もう20年以上前ということになる。

μ-ZiqことMike Paradinasの傑作[in Pine Effect]。

アルバムとしては[Lunatic Harness]の方をたくさん聴いたけど、このジャケットに写っているレコードプレイヤーはなんだろう?とずっと気になっていた。

その頃はまさか自分がオーディオ屋になって、これがDiatoneの<LT-5V>という縦置きリニアトラッキングプレイヤーで、おそらく表面にPine(松材)を貼って改造したものだろう、なんて考えるようになるとは思ってもみなかった。

メンテしずらそうだけど、ふつうに欲しい。


ダイナミックオーディオ・企画室・佐藤 泰地

” iv” -led zeppelin–

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” iv” -led zeppelin–


マラソン試聴会VS対談シリーズもうひとりの刺客、Sonus Faberなどの輸入でおなじみ株式会社Noahの牧野氏が選んだのがこのアルバムでした。

幼い日に、兄と聴いた<Stairway to heaven>が、氏にとっての”ロック体験”の原点だったと語ってくれました。この曲に対して似た思い出を持っている人も多いのではないでしょうか。

僕の場合は小学生の頃に父親が聴かせてくれたのがソレでした。

父親とふたりで「来るぞ来るぞ〜」なんて言いながら、ジョン・ボーナムのドラムが炸裂するのを待っていたのを思い出します。音楽は、こんなふうに次に起こる出来事に期待しながら聴くものだと知ったのです。


ダイナミックオーディオ・企画室・佐藤 泰地

”Eric Dolphy at The Five Spot Vol1.”-Eric Dolphy –

Eドリフィー

”Eric Dolphy at The Five Spot Vol1.”-Eric Dolphy –

Prestige/New Jazz 8260


全く内容も知らないでJAZZの名盤として本の批評に出ていたので買った1枚。
購入時はビクター盤で全体が黒色のジャケットだったが、LPを手にした時に重い手ごたえを感じたことを思い出します。

二十歳前…自作のバックロードホーンSPはフォステックスFP203入り、プリメインアンプはダイヤトーンのDA-U850、プレイヤーは自作のケースにビクターTT-41とオーディオテクニカのAT1501/2を組み込んだ物、カーリッジはオルトフォンVMS-20Eだったと思う。
勉強もしないで幼稚な図面を書いたり、どうやってバイトでAUDIOやLPを買うための軍資金を集めようか、なんて事をいつも考えていた。

A面1曲目・・「FIRE WALTZ」マル・ウォルドロンによるピアノのイントロからエリック・ドリフィーのアルトサックスが自作のバックロードホーンから飛び出した時、
”何が始まったのか”と心が乱れたのです。幼い私にとっては未知との遭遇でした。

およそ14分間の修行のような時間が過ぎたのち、今度は2曲目の「BEE VAMP」が始まってしまいました!!
ドリフィーのアルトサックスサウンドにクラクラしたと思ったら、今度はバスクラリネットサウンドの衝撃です。

訳も分からずになぜかひたすら聴いたLP。しかも大音量で。家族にしてみれば一体何を聴いているんだと思った事でしょう。
聴いている私はワクワク、ドキドキですが、家族からは一度も「うるさいとか」「音が大きい」と注意された事がありません。諦めていたのかな?でもありがたかった。

この時の衝撃はマイルスの音楽と共に10代の私にとって忘れる事の出来ない体験として、
今もドリフィーの音楽に対する真面目さ誠実さ真剣さを私に伝えてくれます。


ダイナミックオーディオ・トレードセンター店長・厚木 繁伸

 

”GROOVY”-RED GARLAND-

Rガーランド.jpg”GROOVY”-RED GARLAND-

Victor SMJ-6504


 

このアルバムをLPラックから取り出す度に子供(高校生)ながらに「俺カッコいい」なんて勝手に呟いていた。このLPジャケット写真のような街角に佇んでみたいものだと真剣に想像していたな。

10代後半には毎日このLPを聴いていた時があった。
特にA面1曲目の「C JAM BLUES」が鳴り出せばポール・チェンバースのベースラインに合わせて体が勝手にビートを刻むんです。

時は流れ自宅でこのLPやCDを聴く事が無くなり、忘れてはいませんが記憶の中の音楽になりかけていました。

ところが忘れた頃にそのサウンドは突然私の目の前に再び現れたのです。

江東区のお住いのN様宅のSYSTEM でこのアルバムを聴いた時の事です。
N氏のシステムはJBL DD66000RWとLINN KLIMAX KONTROL、KLIMAXSOLO KLIMAX DS。確かKLIMAX SOLOのバージョンアップを行い納品した時でした。
N氏が無造作に「C JAM BLUES」をプレイリストに放り込んだその瞬間、私はアート・テイラーのブラシュがスネアに当たる音にビックリしたのです。
言いようの無い衝撃を覚えた私は、続くポール・チェンバースのベースラインが生き物のように弾むのを聴くのです。
そしてそのリズムとビートに絡むようにレッド・ガーランドのシングルトーンがジャンプしてからはもうただただ唸るだけでした。

生きの良い音楽と形容できる、なんて楽しいテンポの音楽なんだろう、踊りだしたくなる勢いだ。

さて、私は幼い頃一体何を聴いていのだろうか…。

音楽の新鮮さがいま生まれたての音のように聴こえる、1日も早く自分のシステムで聴いてみたい確かめたい。
…後日…

安心しました。私のシステムもしっかりと成長していて同じ気持ちで「GROOVY」でありました。

そんな驚きのサウンドは1956年の録音なんです。

プレステッジレーベルではマイルスのバンドやコルトレーンのバンドで活躍しているガラードは名脇役としてリーダーを支えながら忘れる事の出来ないメロディを私たちに教えてくれました。

聴いたつもりでも、全く聴いた事になっていなかったLP・CD・演奏・音楽…さ〜宝探しだ!


ダイナミックオーディオ・トレードセンター店長・厚木 繁伸

 

”Kenny Dorham Quintet”-Kenny Dorham-

Kドーハム

”Kenny Dorham Quintet”-Kenny Dorham-

debut DLP-9


私の大好きなLPジャケットベスト10の一枚

ブラックをバックに浮かび上がるトランペットを吹くドーハムはとてもスタイリッシュで粋なんです。そして使われている字体がさらにジャケットの雰囲気を盛り上げてくれている。
もちろん閉じ込められている音楽はLPジャケットが持つオーラーを何倍にも高めて心に響きます。

ところが運悪く私はこのアルバムの存在を、曲を聴く前にジャケット写真で見て知ってしまったのです。その時点では国内盤LPも無く、CDにもなっていません。このアルバムを本で目にした時からどうしても欲しい、そして聴きたい、どんな演奏が閉じ込められているのだろうか、と思いは募るばかりでした。

さて、ケニーはスゴ腕のトランぺッターではありません。音は外すし、ビックサウンドでもないし、圧倒的なアドリブが出来るわけでもありません。
しかし「クワイエット・ケニー」のような50年以上聴き続けられている名盤がある事実。
圧倒的な演奏でなくても人の心に残る、心を離さない演奏もあるのだということをケニーは私に教えてくれました。

オリジナル2曲とスタンダードが4曲…中でも「Be My Love」と「I Love You」は私の大好きな曲なんです。
メロディーを伸び伸びと歌い上げるケニーのバックでJimmy Heathのバリトンサックスサウンドがオブリガートしてくると特別で不思議なサウンドになって漂ってくるのだ。
その響きと、このLPジャケットの雰囲気が見事に一致していると私のAUDIOSYSTEMは教えてくれるのです。

JAZZトランペットはクリフォード・ブラウンが最高だけど、ドーハムのこのアルバムもまた最高なのだ。これがJAZZって、もんでしょう。


ダイナミックオーディオ・トレードセンター店長・厚木 繁伸

”DADDY PLAYS THE HORN”-Dexter Gordon-

Dゴードン.jpg

”DADDY PLAYS THE HORN”-Dexter Gordon-

BETHLEHEM BCP-36


白をベースに洒落たイラストが描かれたLPは発売から60年も経っているのに驚く程に美しく存在している。私はこの愛すべきLPジャケットを大切に扱い、何回も何回も聴いてきた。

レコードにOFD25を落とすとジャケットの可愛いらしさとは無縁の、男らしいテナーサックスのサウンドが現れる。

人に見た目や個性の差があるようにテナーマンにもサウンドを聴けば「あいつだ」と分かるサウンドがあります。そのなかでも特別なサウンドを持っているのがデクスター・ゴードンではないでしょうか。ロリンズもコルトレーンもホーキンスもレスターも誰もが飛び抜けた個性の持ち主ですが一度聴いたら忘れられないサウンドとして私はゴードンのサックスサウンドをあげます。

男らしいと感じるのは、アドリブのダイナミズムやサウンドの硬さと彫りの深さ、そしてゴードン自身もあきれる程のカッコ良さもだ。

<Autumn in New York>
骨太のピアノトリオメンバーを従えたゴードンが朗々とテーマを歌い上げます。
聴き応えのある音楽というかどっしりとしたビートとリズムはゴードンのサックスのサウンドから生まれているように聴こえる。
一歩一歩足取りを確かめるようにスイングする感じが特別だ。この特別感は「BE-BOP」を生き抜いた者が持つ凄みだろうか。コルトレーンやロリンズには無いスイング感だ。

若いKenny Drewのピアノプレイがフレッシュなアイディアのアドリブでゴードンの音楽に答えるのです。

このLPジャケットはいつ見ても楽しくてね。
でも音道(オトミゾ)にはダンディズムの塊のような聴き応えのあるJAZZが刻まれているのです。

こんな”とうちゃん”はもういないかもしれない。


ダイナミックオーディオ・トレードセンター店長・厚木 繁伸