” Ebony Concerto” -Igor Stravinsky–

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” Ebony Concerto” -Igor Stravinsky–


今年のマラソン試聴会も無事に終了。悪天候のなか足を運んでくださった皆さん本当にありがとうございました。

今回、いままでになかった試みとしてダイナミックオーディオスタッフとメーカースタッフの対談形式というステージを用意しました。そこでLINNからの刺客、アナログの達人古川氏によって選曲されたのが、このアルバムです。

正直ストラヴィンスキーってちょっと苦手だな、なんて思っていたのですが、これが全くの食わず嫌いだったことに気づかされてしまいました。なんて知的で変態的で上質な音楽なんだろう。

食べられなかったものが食べられるようになる。もしかしたらその喜びのためにオーディオが存在するのかもしれません。

そしてふと、大好きになる可能性を秘めたものが、目の前を通り過ぎていくのを、気づくことすらできず見す見す掴み損ねている自分を想像し…家に帰ってさっそく”観測装置”の手入れを始めたのです。


ダイナミックオーディオ・企画室・佐藤 泰地

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”Sunday at the Village Vanguard”-Bill Evans-

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”Sunday at the Village Vanguard”-Bill Evans-

Riverside RLP 376


ビル・エバンスには素晴らしいアルバムが沢山ある。そして素敵なジャケットのアルバムも沢山あるのです。
煙草を手に真っ白なシャツをラフに着ているエバンスが大きな手をテーブルについて此方をじっと見つめている。もうすでに音楽が聴こえてきそうだ。

エバンスが演奏した曲で一番多く聴いた曲がこのアルバムに収められている「Alice in Wonderland」だ。
曲はディズニーのアニメ映画のために作曲されたもので私はこの曲を映画ですでに聴いていたのです。子供の時に見た印象はとても楽しく、不思議で、怖くて、悲しいと沢山の幼い感情を総動員させられてクラクラしたものです。
特に三月ウサギといかれ帽子屋の場面と、チシャ猫との会話の場面は印象に残っているな(笑)。

さてそんな映像を背負って聴いた「Alice in Wonderland」は全く違和感なく、それどころかあらたな新鮮さで私の心に染み渡ってきたのです。

騒めきのビレッジバンガード。エバンスのピアノがイントロを演奏し始めると誰かのテーブルでコインの回る音がするのが印象的だ。
そしてポール・モチアンのブラッシュプレイがアリスのスキップの様にも聞こえ、エバンスのアドリブがファンタジー感たっぷりにスイングする。
スコット・ラファロのウッドベースはこの夢の世界をたっぷりとした響きで包み込み、奔放なピチカットはユーモアのかたまりなんです。

それにしてもエバンスの神憑り的なアドリブプレイは何所から湧いてくるのだろうか。不思議でありがたい。
ためらいとか迷いとかを一切感じることのない力強いピアノタッチは生命力に溢れベースやドラムにも染み渡るのです。
インタープレイとはこのような演奏をいうのでしょう。

一辺の夢のような物語を体験したような8分30秒は大人になってしまった今の私にもその効力を失いことなく楽しませてくれるのです。

 


ダイナミックオーディオ・トレードセンター店長・厚木 繁伸

 

”New Jazz Conceptions”-BILL EVANS-

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”New Jazz Conceptions”-BILL EVANS-

RL12-223


1956年、リバーサイドレーベルにおけるデビュー作であり初リーダーアルバムだ。

発売からもう60年が経とうとしている。
夜の濡れた車道で小さな丸椅子に足を組んで座ってこっちを見ているエバンスのオリジナルLPジャケットは私のちょっとした自慢の1枚。

「ワルツ・フォー・デビー」の影に隠れて通り過ぎてしまうエバンスのアルバムだろうか。
しかし、このアルバムもまた、サイドメンとして若手のベース、テディ・コティック、ドラムにポール・モチアン達を相手に触発しあうプレイを繰り広げています。
注目すべきはソロ演奏で「ワルツ・フォー・デビー」や「マイ・ロマンス」を演奏するトラックが有ることで、シンプルながら後の名演を予感させる歌心溢れたナイーブな演奏を短時間ではありますが聴くことが出来ます。

この若さ溢れる演奏から、後にマイルスのグループに加わり、あの霊感あふれる「カインド・オブ・ブルー」の世界へとエバンスは入ってくのです。

ところで昔…スイングジャーナル誌で女性に聴かせたいJAZZアルバムベスト1にエバンスの「ワルツ・フォー・デビー」が選ばれた記憶がある。
もちろん何の問題もないし、このアルバムでJAZZにのめり込んだ人々が沢山居ることも事実であります。

でもエバンスのピアノタッチをカクテルピアノみたいに表現されてしまっては…ラファロのベースサウンドがツンツンピチカットになってしまっては…。
私は彼らの本当の実力を知りたいが為に聴き続け、AUDIOを調整して少しでも新たな感動が得られればと、想像を繰り返してきました。

エバンスのデビューアルバムを聴くたびに彼のJAZZに対する思いがピアノタッチにのって聴こえてくるのです。そしてインタープレイこそがエバンスの求めているJAZZの姿であると。

エバンスは「熱い男」なんです。

皆さんのAUDIOからは演奏家エバンスの怖さや凄みが聴こえてきますか?


ダイナミックオーディオ・トレードセンター店長・厚木 繁伸