”Sessions Live 1957/58”-Count Basie,Joe Williams and Art Blakey-

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”Sessions Live 1957/58”-Count Basie,Joe Williams and Art Blakey-

Calliope CAL 3008


 

1990年だっただろうか季節は2月。寒風の吹く中、私は初めて一ノ関の駅に立っていた。
雪景色の町の眩しさのせいかBAISEの2枚のドアを開けて中に入ると、暗闇でよく見えない店内に戸惑ったことを今でも新鮮な気持ちで思い出せます。

店内には若干の人影が。席に着きコーヒーをお願いした。
初めての体験、そして緊張のせいかその時再生された曲のほとんどを覚えていないのが何とも恥ずかしい限り。
時間にして3時間ぐらいであろうか、その間マスターは一体何枚のLPジャケットを壁に掛け、そして外しただろう。
その度に私もチラッと確認をするのだが、ふとマスターと目が合っても「話しかけるな」といった視線を私は勝手に感じていたのです。
かしこまりながらもだんだんと店の暗さにも慣れJBLのSYSTEMからあふれ出るサウンドが体に浸透してくるのが分かってくる。
あとはじっとCount BasieのLPが再生されるのを待つだけだった。

そして、とうとうこのアルバムがLP12にセットされたのです。
もちろんSIDE1のBASIEの面だ、いきなり「Whirly Bird」がJBLSYSTEMから飛び出してきた時、私に音楽の魔法がかかったのです。
1958年録音、私の生まれる1年前の音楽だ。音源は放送用のもので、曲間に拍手がはいる。
「Cute」ではドラムのソニー・ペインが本当にそこにいるのではないかと思えるほどリアルな楽器のサウンドだ。特にスネアが!!
2曲のジョー・ウィリアムスのボーカルが参加した曲はこれぞダンスバンドといったノリに(オレは座っていていいのか?)と自問自答。
そして「BeBop Blues」は音の閃光、サックスセクションの響きはソフトで厚みがあり、そこにジョー・ニューマンのハイノートトランペットサウンドが切り込んでくる。
ソニー・ペインのドラムは全力で走りながらも重さと中心軸を外さず、すべての管楽器メンバーをビートとリズムの波に乗せるのです。心の中で楽しさと謎が入れ替わる。
そして最後はもちろん「One O’ Clock Jump」。メンバーの、この音楽を聴いている全ての人々に楽しんでもらいたい、という思いが伝わる演奏だ。

聴き終わった時の私の満足感といったら幸せの極致だったかもしれない。
目の前で本当に演奏が行われていると感じる興奮、BASIEはこんなに凄いのかと分かった喜び。もちろんマスターに感謝。

洒落毛のないジャケットには大きくSESSIONSの文字とシンバルの写真があるだけだけど、私の目に消えることなくサウンドともに焼き付きました。

心の中で「いつか手に入れてやる」と呟いた。

帰り道。とても寒い空気に骨まで震えたが、心は希望に満ちていた。「あそこまで鳴らせるんだ」。
この時まだ、私はこのLPを手に入れてからの苦しみを知らない。


ダイナミックオーディオ・トレードセンター店長・厚木 繁伸

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”AC/DC LIVE”-AC/DC-

ACDC

”AC/DC LIVE”-AC/DC-


AC/DCの顔アンガス・ヤングの躍動感あふれるこのジャケットは聞く前からゾクゾクさせられます。内容はほぼベスト盤と言える内容ですので、初めての方でもすんなり受け入れられるでしょう。
それにしてもこの瞬間を撮ったカメラマンは素晴らしいですね。私の好きなマルコム・ヤングが後ろでちょこっと写ってる所がまたしびれます。すぃびれます。


ダイナミックオーディオ・トレードセンター3F・赤塚 昭虎

 

 

”A Night at The Village Vanguard”-Sonny Rollins-

SR1

”A Night at The Village Vanguard”-Sonny Rollins-

BLP1581 (NYC)


 

JAZZの名盤であることは、ものの本で知っていたが、本当に名盤である事を音で知るまでには何年も何年ももかかってしまった。

それにしても一度見たら忘れることの出来ないLPジャケットの1枚ではないだろうか。
サングラスを掛けたロリンズのアップ…正直圧倒される。フランシス・ウォルフのオリジナル全体写真を見てみたいものだ。

10代の頃の皆さん共通の思いかな、初めて聴くLP(音楽)は期待に胸を膨らませて感動を与えてくれる内容であると。私もそうだ。ブルーノートレーベルでソニー・ロリンズで悪い訳がないと…。2年間ぐらいは聴いたがしばらくはこのLPがターンテーブルに乗ることは無かった。
名盤=名演奏=名録音、そんな思いが聴く前からイメージとして出来上がっていたんだ。
当時の私がきく限り録音がいいなんてとても思えないサウンドがスピーカーから出てきた。
テナーサックスはのっぺり鳴り、ベースはブワン・ブワンと響き、ドラムは奥のほうから小さくパタパタと聴こえる。
何回も聴いて自分なりに努力もした。が、何らかの結果を出すまでには至らなかった

このアルバムを再確認したのはHDTからダウンロードしたハイレゾ音源を入手したのがキッカケだった。
KLIMAX DSを通して「朝日のようにさわやかに」を選曲すると、初めて聴くような新鮮さと迫力に思わず座り直したほどだ。
エルビンの唸り声が音楽の一部となってグルーブしてくる。ロリンズのサックスは野生的でしかも爽やかだ。そしてとてつもない立体感。
続くウイルバー・ウエアのベースソロはまるで地面に杭を打ち込むようなサウンドで、指2本で弦を弾いて出る音とは思えないものだ。
ウエアはジャケット裏面を見れば分かるがとても小柄なベーシストなんですよ。

さてラストはエルビンとロリンズとの掛け合い。ブラシュでスキンを叩いてどうしてこんな音が出せるんだ。そしてバスドラは…唖然。
凄い凄いとワクワクしながら、驚きながら8分間のドラマを満喫した。
その後EMT930stの電源を入れて準備を始め、落ち着いてからOFD-25を同じLPに乗せた。

何も問題は無い。ほんの少しだけテイストが違うだけで過去に聴いた悪い印象はみじんも感じられない。ただ、FLACで聴くアルバムのサウンドは私に新鮮な感情を思い起こさせてくれたことに間違いはない。そしてこのLPの実力を再認識させてくれた。

皆さん、最近新鮮な気持ちを音楽で感じたことありますか。

【オマケ】横の写真は煙草を咥えたセロニアス・モンクです。写真家の阿部 克自氏のオリジナルプリントで、縁あってAUDIOのメンテナンスをした時に頂きました。
笑い話をひとつ。ホテルでのインタビュー、阿部さんが風呂上がりのモンクを写真に取ると、顔すべてが真っ黒で白目と歯が少し見えるだけだったそうです。
もちろんプリント後に分かったのでおおいに焦ったそうです。きっとカサカサのお肌だったのでしょう。


ダイナミックオーディオ・トレードセンター店長・厚木 繁伸

”PAGANINI Violin Concerto No1 op6 etc.”-MIDORI –

MDORI-1

”PAGANINI Violin Concerto No1 op6 etc.”-MIDORI –


 

1987年5月の録音。MIDORIは1971年10月生まれなので録音時はまだ15歳だ!!

1735年製グァルネリ・デル・ジェス・デイヴィッドを持った少女MIDORIのLPジャケットはなぜか浮世離れしている。

天才を目の当たりにするとはこの音楽を聴くことであるだろう。

この演奏を聴いた時、すべてをありのままに受け入れてしまう事しかできなかった。
しかし音そのものの真の姿を部屋の空間に描き出すまでには長い年月が必要であり、時に苦行のような厳しい聴きこみを要求してくる。
それでもその苦しみはより素晴らしい感動を呼び起こす為の試練だと思い、ひたすら聴き続けてきた。

15歳の日本人の少女がどうしてこのような演奏の辿り着く事が出来たのであろうか。
音符からどのようにして音楽を演奏を理解するのだろうか。

教えられた演奏でないことは間違いない。MIDORIが感じたそのもなのだろう。

B面にあるチャイコフスキーの「憂うつなセレナード」の演奏表現に至ってはさらに謎が深まるのです。
大ロシアの「憂うつ」なるものを15歳で島国育ちの少女がどのように理解してサウンドさせられるのか。
チャイコフスキーがこの演奏を聴いたらどんなことを思い言葉にするのかを想像するだけでドキドキする。

天才の謎は凡人の私には遥か彼方、永遠の謎なのです。だから永遠に聴き続けます。

AUDIOは天才を表現する事ができるかもしれない道具の一つだが、その道具は人が選び使いこなすものだ。
この時のMIDORIの心持ちをAUDIOをお通して共有出来る事の喜びを今も感じます。


ダイナミックオーディオ・トレードセンター店長・厚木 繁伸

”New Jazz Conceptions”-BILL EVANS-

BE-1

”New Jazz Conceptions”-BILL EVANS-

RL12-223


1956年、リバーサイドレーベルにおけるデビュー作であり初リーダーアルバムだ。

発売からもう60年が経とうとしている。
夜の濡れた車道で小さな丸椅子に足を組んで座ってこっちを見ているエバンスのオリジナルLPジャケットは私のちょっとした自慢の1枚。

「ワルツ・フォー・デビー」の影に隠れて通り過ぎてしまうエバンスのアルバムだろうか。
しかし、このアルバムもまた、サイドメンとして若手のベース、テディ・コティック、ドラムにポール・モチアン達を相手に触発しあうプレイを繰り広げています。
注目すべきはソロ演奏で「ワルツ・フォー・デビー」や「マイ・ロマンス」を演奏するトラックが有ることで、シンプルながら後の名演を予感させる歌心溢れたナイーブな演奏を短時間ではありますが聴くことが出来ます。

この若さ溢れる演奏から、後にマイルスのグループに加わり、あの霊感あふれる「カインド・オブ・ブルー」の世界へとエバンスは入ってくのです。

ところで昔…スイングジャーナル誌で女性に聴かせたいJAZZアルバムベスト1にエバンスの「ワルツ・フォー・デビー」が選ばれた記憶がある。
もちろん何の問題もないし、このアルバムでJAZZにのめり込んだ人々が沢山居ることも事実であります。

でもエバンスのピアノタッチをカクテルピアノみたいに表現されてしまっては…ラファロのベースサウンドがツンツンピチカットになってしまっては…。
私は彼らの本当の実力を知りたいが為に聴き続け、AUDIOを調整して少しでも新たな感動が得られればと、想像を繰り返してきました。

エバンスのデビューアルバムを聴くたびに彼のJAZZに対する思いがピアノタッチにのって聴こえてくるのです。そしてインタープレイこそがエバンスの求めているJAZZの姿であると。

エバンスは「熱い男」なんです。

皆さんのAUDIOからは演奏家エバンスの怖さや凄みが聴こえてきますか?


ダイナミックオーディオ・トレードセンター店長・厚木 繁伸

”No.38/1976 SPRING”-Stereo Sound-

ステレオサウンド

”No.38/1976 SPRING”-Stereo Sound-

オーディオ評論家ーそのサウンドとサウンドロジィ


 

私の住んでいる街には2件の個人店の本屋があったが今はもうない。

小さな町の本屋でNo34号のステレオサウンドを初めて買った時は毎日学校から帰って眺めて一月は飽きることがなかった。
本屋で立ち読みしていると左手が痺れて腕がまっすぐに戻らないという重さにビックリしたのを思い出すな。

No38号を手にした時、漆黒をバックにエレクトロボイスのフルレンジユニットが浮かび上がる表紙に大人の雰囲気を感じていた。
今号の企画は黒井恭一氏が当時ステレオサウンドの主たる評論家のリスニングルームを訪問するものだった。
順番に…岩崎氏、瀬川氏、菅野氏、柳沢氏、上杉氏、長島氏、山中氏、井上氏。
各氏のリスニングルームの空気感まで伝わってくるような素晴らしいアングルと色合いの印刷、その中でお使いの機器達が実にクリーンに佇んでいる。

心が痺れると共に限りなく夢が膨らんだ事は今も忘れません。

各氏と黒田氏の真剣で誠実な会話の妙はAUDIOの素晴らしさと音楽を聴く喜びに溢れていてドキドキしながら読んだんだ。
そして黒田氏が必ず最後に皆さんに問いかけるのです。
「ひとことでいってオーディオとはなんですか」
「それでは音とはなんでしょう」
「オーディオファンに一言」
各氏とも人柄や再生されるサウンドが感じられるような答えをしてくれている。
黒田氏は全員に訪問をした印象を手紙形式で伝えてくれるのですが、これがまた何とも言えなくいいんだなー。

ご興味のある方はここトレードセンターの3Fにございますのでお立ち寄りしてみては。

しかし、私にとってこの号で最大の出会いは【オーディオの名器にみるクラフツマンシップの粋 第二回】 JBL SG529 SE400S SA6000の連載記事だ。(ところで第一回はなにか?・・marantzであります)
山中氏と岩崎氏の対談で1960年代に作られたJBLのコシュマー用のアンプについて熱く語り合ってるんですね。
当然二人の会話から音が聴こえてくることは無いのだが、50回も読んでいると聴こえてくるような気がするもんです。
そして初めは厳ついデザインと思われていたSG520の形が不思議なことに、どうしても欲しい、使ってみたいと切実に思い焦がれるようになってしまったのです。

ふと気が付けば私の傍に38年間も寄り添ってくれています、修理のとき以外、私の部屋から一歩も出ることなくSYSTEMの一員としてリーダーを務めてくれて。
こうしてキーボードを叩いている今も電源が入ったまま(※自己責任)私の帰りを待っております。

SG520について書き出すと止まらなくなる。面倒だけど離れられ無い、そして見飽きない。ほかに何が必要でしょうか。

ステレオサウンド 38号は 私の人生のある部分を確定してしまった運命の雑誌でした。


ダイナミックオーディオ・トレードセンター店長・厚木 繁伸

 

”Sings Lullabys of Birdland & Sings Lullabys for Lovers”-Chris Connor-

クリス コナー

”Sings Lullabys of Birdland & Sings Lullabys for Lovers”-Chris Connor-

Bethlehem BCP 1001 & Bethlehem BCP 1002


バート・ゴールドブラット撮影の写真を使った2枚の10inh LPアルバムは、見ているだけで私を50年代のスタジオへとタイムスリップさせてくれます。

1983年だったであろうか原宿にあった中古店ダイナミックメイトから新宿店地下1階のJBLフロアーに移動を命じられたのは。
中古専門店を離れるのはとても辛かったがJBL専門フロアーという響きには非常に魅力的な誘いも感じていた。
この時私はJBLについてはほぼすべての単体ユニットのモデルナンバーやその使用用途を把握していたからであります。
その知識がお客様に役立つのか試したい気持ちに心は大きく傾いていた。

クリスのジャケットの話に戻ろう。
あの頃新宿駅周辺には何軒かの有名なJAZZ中古レコード店が点在していて、その中でもディズク・ユニオンは最大手で国内盤からオリジナル盤までその展示量は圧倒的であった。
いつものように素早く昼食をすませてレコード棚の前に…素早くLPを眺めていると勝手に手の動きが止まったのを覚えている。それがこのBCP1001だ。
もちろん聴いた事はないのだが、このジャケットを見ただけで聴いてみたいと財布にあったほぼ全ての金銭を叩いて店に戻ったのを思いだします。

家でRMG-212を操りCA-25DをLPのグルーブガイドに針を落とすと、驚いたことに男性のアナウンスから音楽が始まるのだ。内容はクリスの紹介とバックメンバーの紹介だが
この導入部が意外と気持ちをワクワクとさせてくれた事を思いだす。

ドラムレス、ピアノとベースとギターのトリオのバックは3人のトーンが溶け合いまるで一つの楽器のように聴こえる。
クリスの声はそのサウンドと相性がピッタリで3人のビートとリズムの外輪を滑らかに滑るようにスイングするんだ。

それにしてもエリス・ラーキンスのピアノによるバッキングはきわめて味わいがあり歌心に溢れていてクリスをさらにその気にさせる。
コナーはこのトリオでデビューが出来て幸せだっただろう。

もう一枚は後から知ってネ。これまた素敵なジャケットでどうしても揃えたくなった。
内容は…ジャケットと同じぐらい雰囲気があり選曲のセンスがいい。

ジャケ買い…当たった時の気持ちは最高だったな。


ダイナミックオーディオ・トレードセンター店長・厚木 繁伸